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e-Associates Mail Magazine 2004/12/21



イー・アソシエイツ オンラインジャーナル
臨時増刊号−株主総会事情等 Vol.11



In the long run, nothing is more important to a company than its reputation.

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1.カルパース・トップの突然の解任

コーポレート・ガバナンスのオピニオン・リーダーで米最大の年金基金であるカルパース(カリフォルニア州職員退職年金基金)のシーン・ハリガン理事長は12月1日、突然解任された。

ロサンゼルスの地元紙は11月30日付にて、株式価値の向上を図ってコ ーポレート・ガバナンス実践の元祖として、企業の不正を正したり悪質 な経営陣の更迭を求めるなど活発なガバナンス活動をしてきたカルパー スのトップ解任のニュースを報道した。その後全米や欧州のマスコミも 大々的に報じたが、解任の理由は明らかにされていない。日本では4日 後の12月3日に経済専門紙が囲い記事で簡単に報じたにすぎない。
空席となったカルパースの理事長のポストは2005年2月16日に決定さ れるが、暫定的に共和党系の不動産開発業者であるロン・アルバラド氏 が就任した。不思議なのは、解任発表後数週間経過しても本件の当事者 の一人であるカリフォルニア州知事のシュワルツネッガー氏(共和党) をはじめ、関係者からはその理由について公式な説明はない。

以下、カルパースのトップ解任の背景などについて述べる。

2.労組出身の理事長とコーポレート・ガバナンス

カルパースの理事会は基金内出身者6名、外部からの州知事任命者3名、 州行政機関出身者4名の13名で構成されている。現在の理事の大半は 2003年10月に行われたカリフォルニア州知事のリコール選で敗退したグ レイ・デイビス前知事(民主党)のシンパである。民主党の知事が任命し た理事らは次回の同州の知事選のある2006年11月までそのポストに留任 し続けるため、共和党のシュワルツネッガー氏はこの役員構成に不満を 募らせてきたと思われる。
ハリガン氏はスーパーマーケットの大手セーフウェイ社が加盟してい る流通業界の労組運動に長らく係わり、全米食品流通労組(UFCW)のリー ダーとして実績が買われてきた。「働く者の処遇改善と地位の向上」を 追求して来たこともあり、「経営と対峙」する手法とカルパースの投資 先企業に対するガバナンス実践に係わるアプローチは今迄の理事長とは 異なる点が見られた。
今年は投資先企業の全米2,700社の議案に何らかの「反対票」を投じ ると同時に、多くの米国内の公的年金(特にニューヨーク州、コネチカ ット州の公的年金)にも呼びかけて社会的問題や環境問題をも包含した 幅広いコーポレート・ガバナンスの主張を一段と強めたため、内外から その過激ぶりが注目されてきた。
「ダメ企業」と指摘した企業のトップと何度も折衝して株価を上昇さ せるため、経営の透明性、情報の公開、説明責任などガバナンスの見直 しなどを強く求めてきたため、カルパースに株を保有されている企業の 経営側から煙たがられる存在になりつつあったことは否めない。
もっとも、カルパース自身は己の資産の運用実績を十分公開していな いとして2002年10月に告訴されたことがある。また今回の解任にかかわ る説明責任は受託者に果たしていない。

3.過激さが目立つ最近のガバナンスの実践

カルパースが米国の企業に対し行った典型的な株主権の主張としては下記の事例があげられる。

ニューヨーク証券取引所のグラソー理事長が長年にわたり巨額の報酬を得ていたとして2003年に辞任に追い込んだ。
2004年のディズニー社の株主総会で、CEO兼会長のマイケル・アイズナー氏に対して経営不振の責任をたらせるべく会長兼務をやめさせた。アイズナー氏はCEOに専念したが、自ら2006年に辞任することを公表した。
2004年のコカ・コーラ社の株主総会では社外取締役に「投資の神様」といわれるウォーレン・バァフェット氏が、社外取締役として就任しようとしたところ、利益相反があり、独立性に問題だとして反対した。しかし、この動きは多くの投資家から嘲笑された。
スーパー大手のセーフウェイ社のバードCEO兼会長に対して長期間にわたるストライキで株主価値を毀損した責任として、ハリガン氏らは辞任を迫ったが失敗した。もともとこのストライキには労組の役員としてハリガン氏も係わっていたといわれ、株主権を利用した労組運動とし注目された。
人材斡旋大手のCACI社が採用してイラクに派遣した米陸軍スタッフ3人が、イラクの収容所で虐待行為をしたため、国際的に同社の評判が下がり株主価値が下落したとして「説明責任」を求めた。この動きは政府与党を刺激させものの同社の株価の下落はまもなく回復した。しかし、CACIの米国法人のケネス・ジョンソン社長は2004年9月30日に辞任を発表した。
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ブッシュ大統領の再選に多大な貢献をした共和党系のビジネス界は、 上記の身勝手とも言えるカルパースの株主活動と「株主が社外取締役を 推薦できる」ように法制化する動きにロビー活動をしたことは頷ける。

4.米国流のガバナンスに変調?

ハリガン氏は自身の突然の解任について12月5日付の地元の有力紙ロ サンジェルス・タイムに自らの手記を寄稿した。
それによると彼自身のこれまでの行動は、カルパースの基金の運用成 果を向上しようと思って行動したまでで「政治的意図はない」し、むし ろ「解任はカルパースの方針に沿って行動した犠牲者」になったと説明 している。
労組が好む「正義は力」であり、「正義は必ず勝利」するという理想 的な言葉は、企業で不正を容認する取締役会や悪質な取締役がいる現実 の企業社会に対して、公的年金の株主権の主張がどのように調整され対 処されていくのか。本件のトップ解任劇は今後の米国流のガバナンスの 実践に単なるブレーキとなるのか、それともこれを契機にコーポレート ・ガバナンスに新しい課題をもたらすのか、その潮流の変化に注目したい。


[執筆者紹介]
藤田 利之
中央三井信託銀行、プルデンシャル・ファイナンス・アドバイザーズ証券 等を経て現在イー・アソシイエイツ(株)リサーチ・ディレクター。
コーポレート・ガバナンスを専門とし、「日本企業にモノ申す外国人株主 (東洋経済新報社)」、「外国人株主の議決権行使(商事法務研究会)」な どの著書がある。



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