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e-Associates Mail Magazine 2004/ 6/ 3



イー・アソシエイツ オンラインジャーナル
臨時増刊号−株主総会事情等 Vol.8



In the long run, nothing is more important to a company than its reputation.

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1,440億ドルという巨額資金の大半を株式に運用するカルパースはコーポ レート・ガバナンスの先駆者としてだけでなく、株主総会が近づくと毎年 「モノ申す」株主としてその動向が内外の市場関係者やメディアから注目 されてきた。

最近のカルバースの動向を調べると、外側から見れば受託者責任の立場か らその行動力が評価されてきたものの、内側からは「矛盾する」と思われ るコーポレート・ガバナンスを主張していることが見えかくれする。すな わち、カルパースは常に企業に対して透明性のある経営を求めて取締役の 独立性と情報公開を主張し、更に問題企業の取締役に対して機会あるごと に経営の説明責任を求めてきたが、カルパース自身のガバナンスは必ずし も外部に要求する水準に達していないのではないかという点である。

カルパースが非難されはじめたきっかけは、@2001年に倒産したエンロ ン社に対して10年以上にわたって大口株主でありながらコーポレート・ ガバナンスの観点から何の行動もとらなかったこと、Aカルパースは自ら 年金資金を株式・債券などに運用していながら、運用状況が芳しくないた めかその運用成果を対外公開しなかったため、2002年10月一部のメディア から告訴され、渋々一部公開に応じたこと、Bカルパースは議決権行使に 際して最も力点を置いているのは取締役の独立性であるが、後記のとおり カルパースの役員会は政党色が濃厚であり、独立性のある役員が少ないた めか議決権行使に客観性を欠く面が見られることなどである。

今年、カルパースは「取締役の独立性」と「財務・会計の透明性」の観点 から、多くの米国企業の株主総会の取締役選任の議案を厳しくチェックす ることにし、特に監査委員会のメンバーになっている取締役が「非監査業 務」で当該企業とコンサルタントなどの兼業をしている場合は「利益相反 があり得る」として、投資先企業の90%の議案に反対したと発表した(20 04.5.5付カルフォルニア州会計監査官のHP)。これらカルパールの一連 の動きは、企業側に対して利益優先より、社会的正義にもとづいて行動せ よとの具体的なメッセージである。しかしながら、この動きがあまりにも 目立ったため、カリフォルニアの州共和党は株主総会たけなわの4月29日 に「カルパースの役員は全員クビにせよ」との声明を出した。

エンロン事件の反省もあってかカルパースは議決権行使の原則を一段と厳 しく適用することになり、今年は以下のとおり利益相反を防止すべく監査 委員会の取締役の「独立性」について厳しすぎるほど厳格に株主権を行使 した。

従来カルパースが「NO」と主張してきたのは株主価値を毀損したか、そ の可能性がある場合が多かった。具体的には数期にわたる業績不振や不正 経理疑惑に関連した責任説明不足などが理由であった。しかし、今年のカ ルパースは米国大手企業で反対した議案の大半は取締役選任に係わる「独 立性」があるか否かという点が圧倒的に多かった。以下はカルパースの行 き過ぎとも思われる議決権行使の事例である。

・国際的飲料販売・メーカーのコカ・コーラの株主総会でウォーレン・バ ァフェット氏はバークシャー事業の様々の部門を通じて同社と既に取引関 係があるとして反対した。同氏は投資の神様といわれ、コカ・コーラやジ レットなどの株式を40年前から投資し、その運用成果は全株式の平均株価 水準の2倍以上で、その投資哲学はウォール・ストリートでも評価が高い。 同社株を8.2%保有する同氏が利益相反をすることはあり得ないと言明し ている。

・世界最大の銀行であるシティー・グループのワイル会長は、アナリスト の利益相反に伴い罰金400百万ドルを支払った説明責任を果たしていない と取締役就任に反対した。しかし、同氏の経営手腕は米国金融業界では 評判抜群で、2004年3月期の決算は純利益が前年比29%アップし、株価も 同30%アップし、38ドルから50ドルとなったこともあり、株主総会では 94%以上の賛成で同氏の取締役就任は可決された。

・同じくシテイー・グループのプリンス社長もその夫人が、同社グループ と取引がある法律事務所にパートナーとして勤務しているため独立性がな いとして取締役就任に反対した。取締役の独立性を厳密に追及すると社外 取締役を探すのが大変難しくなるという議論を呼んでいる。

・世界的な娯楽・メデイアのウォルト・ディズニーのカリスマ経営者アイ ズナー氏は業績のわりに報酬が多過ぎ、その専横ぶりが目にあまるとして 取締役就任に反対した。また、会社からコンサルタント料を受領している ため、独立性なしと他の2取締役の就任にも反対した。しかし、5月に発 表された同社の2004年3期の決算は低迷していたテーマ・パークの業績が 回復傾向にあり増収増益となり、純利益は前年比71%アップし、537百万 ドルとなり、カルパースら機関投資家から非難されたアイズナー氏には 追い風が吹きはじめた。

・その他、GE、シーアーズ・ローバック、メルク、ボーイング、ブリス トル・マイヤーズなど30社以上の有名大企業の会社側提案の取締役選任議 案に「否定的」な議決権を行使した。

カルパースが「モノ申す」スタンスを一段と強めている別の要因として、 カルパース内の役員構成から推測される「政治的背景」が指摘できる。 つまり、カルパースの13名の役員のうち6名基金はの内部出身者。残り7名 の外部出身者は2名は州知事、1名は州議会長が指名した者と、州民の選挙 によって就任する州公的機関の職権上のポストにより役員となる4名(州 財務長官、州会計監査官、州人事局長及び州人事委員会の任命者)である。 ここで更に問題とされるのはカルパースの現在の外部役員は前知事のデー ビス氏(民主党)が2003年10月のリコール投票で敗れたものの、他の外部 役員は次の2006年11月の選挙まで改選されないため、依然として民主党色 が続いている点である。特に州財務長官のアルジェリデス氏は2006年に現 知事のシュワルツネガー氏(共和党)に対抗して民主党の州知事として出 馬の予定といわれ、同氏も会計監査官もカルパースの投資方針について「 労働・福祉・環境などの社会的視点を重視した投資」をすると州民に明言 してきた。つまり、本来年金受託者の利益が最優先されるべきカルパース の巨額な年金運用方針は、様々な社会的インパクトを期待して州民への政 治的アピールを念頭において策定されているフシがあるとも言える。また カルパースは運用損を抱えているため、受益者からその関心をそらすため に投資先企業に声高に注文をつけているとの指摘もある。カルパースが引 き続き取締役の独立性や監査委員会のフェアーなる任務遂行など、取締役 会の改革やディスクロージャーを強く求め続けて行くためには、同基金自 体もいわゆるフリーハンドの見地からも、その役員会の構成や独立性を見 直すと同時に、株式運用損などの情報公開についても受託者責任の一環と して一段の公開を迫られよう。


[執筆者紹介]
藤田 利之
中央三井信託銀行、プルデンシャル・ファイナンス・アドバイザーズ証券 等を経て現在イー・アソシイエイツ(株)リサーチ・ディレクター。
コーポレート・ガバナンスを専門とし、「日本企業にモノ申す外国人株主 (東洋経済新報社)」、「「外国人株主の議決権行使(商事法務研究会)」な どの著書がある。



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